現実と想像 第1話
受験に受かった者やこれからの者がちらほら出てくる季節。そんな中、一人の中学生の少年が学校に向かっていた。彼の名は『石森 竹也(いしもり たけや)』人は『タケ』と呼んでいる。『タケ』は最近、近くの高校に受かり少しばかり負担が軽減された今日この頃である。
タケは学校に到着した。早過ぎずギリギリ過ぎず丁度いい時間だ。荷物を自分の机に置くと『最近まで』ポケモンをやっていた友人に話しかける。
「お前、まだやってるのか?」
鋭く突き刺さるかのような口調でタケに言う。彼はすぐ受験を控えているためポケモンどころか全てのゲームを封印しているのが現状であり、そのせいか大分ピリピリしている。
「そろそろ、卒業すればいい……」
その友人は止めを刺すかのように言った。丁度そのとき、話し方も容姿もキザで嫌なやつで有名な『永井 アキラ(ながい あきら)』が話しに割り込んできた。
「ふ〜ん、タケ君はまだやっているんだ」
嫌な口調だとタケは思ったが口にしない。『運動神経』も『学習神経』もいまいちな彼はいわゆるガキ大将気取りのアキラに勝てるわけが無い。
さらにタイミングを図ったかのように『森 明日香(もり あすか)』まで、話に入り込む。
「あれ? 私はまだ、やってるけど?」
長めの髪を靡かせながら明日香は言う。朝は教室には一番乗り。花に水をやり、黒板は常にきれいに保つ彼女であるが、タケが片思いをしているのは誰にも内緒である。しかし、明日香はそれに気が付いており『その時』を待っている。
「と、いうか、俺達の話に割り込まないでくれるかな?」
アキラの鋭い突っ込み。明日香も負けてはいない。
「何か問題ある?」
「……ちっ……ポケモンなんて」
そう言い捨てて、アキラついでにタケの友人も去って行った。縁の下の力持ちタイプの人間であり更にはいざという時には庇ってもくれる。タケはそんな明日香が好きなのである。
「タケ君もちょっとは言い返しなよ」
「う、うん……ごめん」
タケは明日香の前だけありうまく話せなかった。
そして、チャイムが鳴って担任である光(こう)先生こと『高橋 光輝(たかはし こうき)』が教室に入ってきた。
「これから授業を始めるから、席に着きなさい」
……授業を全て終え放課後となった。タケは明日香に告白するということを決意していた。教室にはタケと明日香しかいない。
「も、森さん。ちょっといいかな?」
絶好のチャンスでありながらうまく話せない、タケ。
「何?」
明日香は荷物を鞄にしまうのを止め、タケの方を向いた。
「ま、前から、森さんのことが……」
「あら? お二人さん、何しているんだい?」
ドアに体を預けるかのようにジャージ姿のアキラは立っていた。どうやら後輩の部活を見に来ていたようだ。
「……じゃあ私、帰るね。また明日」
笑顔を見せながら言った明日香は鞄を抱え足早に教室を出て行った。
「あっ、ぼ、僕も帰るから」
タケもそれに続いて教室を出た。悔しさと空しさから必然的に足早になる。
……『石森 竹也』『森 明日香』『永井 アキラ』の三人を中心に巻き起こる物語が始まるのである。