神サマの探し物 第一話


中学生くらいの女子が真っ白い空間をさまよっていた。

「ここって何処なの?」

ずっと歩き続けていた彼女は身も心もクタクタだった。意識が朦朧としてくる中、人影が見えた。それを確認するとその人影に向かって彼女は走っていった。

「すいません……」

彼女が息を切らせながら話しかけたのは一人の老人だった。

「何じゃ?」

その老人は優しく答えた。

「ここは何処なんですか?」

「ここか? ……ここは現世とあの世の間というべきかの」

急にその老人は真面目な顔になった。

「現世……あの世?」

彼女は全く状況を飲み込めていないようだ。

「そう、残念だがお主は命を落としておる」

「わ、私が……!? 嘘でしょ?」

彼女は全く信用していないようだ。

「神様のわしが言うんだから本当じゃ。『佐藤 澪』よ」

「か……神様?」

彼女の名前は『佐藤 澪(さとう みお)』というらしい。完全に動揺しきっている澪はその場に座り込んだ。

「そうだ、私は――」

ことの全てを飲み込んだ彼女の目からは涙が溢れてくる。

「本来ならばこのまま天国へ逝ってもらうところじゃが、まだ若いお主に一つチャンスをやろう」

澪は顔を上げて神様のことを見た。

「お主のことを生き返らせてやることは出来るんじゃが――――」

その後も澪と神様のやり取りは続いた。あの彼のように……








『その彼』であるが同時刻、学校に登校してきたばかりの彼……高校2年生の『鈴木 涼太(すずき りょうた)』は机に伏せていた。

「あ〜眠い……」

この涼太であるが一度、交通事故で命を落としているのだが神と名乗る老人にお遣いを頼まれ生き返ったのだ。そのお遣いを果たした後、もう一度あの世へ戻っていったのである。では、何故その彼がここにいるのか? 時を少し遡り見てみようではないか。







……数日前、某白い空間にて。

さて、俺は神様のお遣いを果たしこのまま消えてしまうかと思いきや再び神様と遭遇した場所に俺は立っていた。

「帰ってきたか……」

背後から声がして俺は振り返ると、そこには神様が立っていた。

「うわっ!」

俺は驚いて気持ちだけ3メートル位退いた。

「そこまで驚くことも無かろう……」

神様はそういいながら、俺の手首についている神様の忘れ物……黄色い腕輪を見ていた。

「そうか……それはわしよりお主を選んだようじゃ」

「ど、どういうことですか?」

俺はよくわからなかった。これが俺を選ぶって……

「いい加減喋ったらどうじゃ? 『神の輪』よ」

『分かりました』

なんと、突然俺の手首にある腕輪が話し始めた。

「な、なななな、何なんですか、これは?」

動揺して何度も噛む、俺。

「これはの自分自身の魔力を引き出し形にする道具でな、装着する人物によってその形を変える。そして、これはわし専用の意識を持つ『TFG−3』という道具だったのじゃが、名前が名前だったんでわしが『神の輪』と名づけてやったのじゃ……じゃが神の輪と会話が出来るのは所持者本人か十分な素質がある……すなわち魔力が高い者じゃから、お主は素質があるということになる」

神様の口から横文字が出てきたのはビックリしたが、今はそれどころではない。

「俺に素質が……?」

「じゃあ、本人に聞けばよかろう」

神様はそういって神の輪のことを見た。

『はい。彼には相当な素質があり、尚且つ魔力の波長が彼の方が「よっぽど」私と合います』

神様は胸の辺りに鋭い矢印が刺さったのかのように痛がっている……神の輪さんは以外と酷いことを言うようだ。

「……ということで、わしに代わってまたお遣いを受けて欲しいのじゃ」

苦しそうにハァハァと息を上げる神様。

「で、今度はどんなお遣いで?」

「天法……天の法律が変わっての、わしが生き返らせた人間を帰還させて欲しいのじゃ」

「……はい、分かりました」

俺は、適当な返事をした。

「詳しいことは天の輪から……」

『そして、私は「天の輪」という名前で呼ばれるのは嫌です。新たな主……涼太さん、是非私に新しい名前を下さい』

天の輪さんは神様の会話に割り込み、さらに神様に追い討ちを掛けるかのように言った。再び神様は鋭い矢印が刺さったかのように胸を押さえその場に倒れこんだ……ここの場所だけに昇天です。

「……じゃあ、光ってて月みたいだから『ルナ』でどうですか?」

『…………認証しました。とてもいい名前です。では、私のことはこれから「呼び捨て」で「ルナ」とお呼びください』

「あぁ、はい……」

俺はチラッと倒れている神様のことを見た。

『では、地上に行きましょう。詳しい話は到着した時で……後、私に対して敬語は結構ですので……』

そして、俺と黄色い腕輪のルナはその場から消えた……倒れている神様を残して……